魔法使いになったら

朝、白い紙切れ一枚の光が見える。
その刹那を、後生大事に繰り返す。
身体が鉛になってしまった私って、
いつ時間魔法を習得したのだろう。

昼、繰り返し白い紙切れ一枚の光。
その刹那を、後生怠惰に繰り返す。
言葉の砂漠を彷徨い続ける私って、
いつ会話魔法を手放したのだろう。

夜、あの薄っぺらい光を失くした。
その刹那が、ずっと酷く愛おしい。
夢の中だけにいたいと願う私って、
いつ安眠魔法を見つけたのだろう。


再び朝、私のような声が聞こえる。
再び昼、知らない誰かの声が響く。
再び夜、雑音しか聞こえないから。
今、私の為に魔法をかけてあげる。

再び朝、まだ私は大丈夫、大丈夫。
再び昼、まだ私は大丈夫、大丈夫?
再び夜、もう私は大丈夫じゃない?
今、私の為に魔法をかけてみせる。

これできっと大丈夫。


そうだ、これは魔法だったんだよ。
世界で誰も使えないような魔法を、
毎日使っている私はきっと偉いね。

そうだ、これは魔法だったんだよ。
世界で誰も使わないような魔法を、
毎日使っている私はきっと賢いね。

そうだ、これは魔法だったんだよ。
世界で誰も知らないような魔法を、
毎日考えている私はきっと凄いね。

そうだ、これは魔法だったんだよ、

世界にたった一つしかない、
私だけの魔法を見せてあげたいんだ。

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